藤井四段の対局ネット生放送が将棋界にどう貢献したのか(マーケティングの視点)

藤井四段の史上最多連勝記録のかかった第30期竜王戦決勝トーナメントを、ニコニコ生放送で観戦しました。

29連勝の新記録を樹立した瞬間もネットで視聴していました。

このネット生放送が将棋界にどう貢献したのか、感じたことを書いてみたいと思います。

持ち時間の長い将棋の生放送は、将棋盤面の変化がゆるやかなので、視聴者を飽きさせない仕掛けが必要となります。

この生放送では、それを下記を用いて華やかにそして鮮やかに盛り上げています。

  1. 「光速の寄せ」の異名をとるカリスマ棋士、谷川浩司九段と、タレントさんのような雰囲気の若手女流棋士の里見咲紀 女流初段の2人を解説者としたこと。
  2. 里見初段が初心者が疑問に思うようなことを、谷川九段に代弁して質問していること。
  3. おなじく里見初段が谷川ファンが聞きたいようなことを、メールの質問と合わせ谷川九段に質問していること。
  4. 長考の時間を、解説者お二人への読者からのQ&A対応にしていること。
  5. 途中途中に、どの手がベストと思うか視聴者にネット上で選択させ、リアルタイムの集計をさせること
  6. ソフトの読み筋を画面上の脇で紹介し、プロの解説と対比させていること。
  7. そしてニコニコ動画のおなじみ、視聴者からのコメントをタイムラインで流して場の雰囲気を伝えていること。(タイムラインは終局時にはすごい勢いで流れている)
  8. 終局後の感想戦も放送されていること。

ただ、この生放送で大きな功績は、上記のようなエンターテインメント的な要素に加え、われわれ一般の将棋ファンとプロ将棋界の距離を縮めたことが大きいと思います。

谷川九段は、ぼくのような小さいときに父に鍛えられたかつての将棋少年からすると、カリスマ的な存在です。

雲の上にいるような存在なのですが、放送ではその素顔に迫る質問も数多くあり、谷川九段の素顔と人柄が伝わってきました。

棋士の素顔が伝わるということでいえば、食事休憩でどのようなものを注文したかという報道です。賛否両論あるこの報道も、棋士の素顔を伝えるという視点では正しいのではないのでしょうか?

また素顔を伝えるということ以上に、感想戦の放送も含め、普段われわれが接することができない情報が公開されていることが実に大きいことと感じます。

そのようなことをもろもろ考えて、今回の藤井四段のフィーバーに伴うネット生中継は、積極的な情報公開や素顔を伝えることを含め、プロ将棋界とわれわれ一般市民の距離を縮めたことが何より重要なことと考えます。