「パーパス」や 「パーパス経営」が、最近とみに語られることが多く、企業の情報発信においても流行語になっている印象です。
企業の統合報告書や決算説明会の資料をみても、パーパスについて、わざわざ1ページを割いて説明している例もめずらしくありません。
また民間企業だけではなく、2023年5月には埼玉県入間市が自治体としてもパーパスを制定したことがニュースになったことは記憶に新しいです。
当社でも、お客様からホームページのリニューアルの時に、パーパスをどう表したら良いのか質問を多くいただくので、今回のブログではパーパスについて述べてみました。
そもそも「パーパス」とはなんぞや・・・というところですが、その定義については千差万別。
上場企業や日経系のメディアでは、「存在意義」という意味で使われていることが多く、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と合わせて、経営理念を伝える表現として多用されています。
では従来の経営理念とどう違うかということに関しては、社会との関わり合いが述べられている点。
従来のステークホルダーは「三方良し」に代表される売り手/買い手/世間のみでした。
しかし近年はBRT(米国ビジネスラウンドテーブル)やWEF(世界経済フォーラム)での提唱きっかけに、広範囲なステークホルダーに照準を合わせるようになってきました。
結果、ステークホルダーが「六方良し」に代表される、株主/従業員/顧客/サプライヤー/地域社会/社会全体 と広がってきたのは色々なメディアで語られている通りです。
それを受けて、より上位の経営理念が必要となり、パーパスという概念が用いられているのが現状だと思います。
たとえば「DEEP PURPOSE 傑出する企業、その心と魂」の著者はパーパスのことを次のように述べています。(P31からの引用)
パーパスはそのビジネスがステークホルダーたちのために、利潤の出る形で解決しようと意図している。 商業的社会的問題の統合ステートメントである。この表現は、目標と責務の両方を含み、ビジネスとは何か、そしてそれがだれに利益をもたらすためのものかについて、簡潔に伝えている。
しかしながら、このようなパーパスとは別の、「志」という視点を重視したパーパスの考え方があります。
こちらの方がわたしを含め、中小企業の経営者にはぴったりくるのではないでしょうか。
この例としては一橋大学ビジネススクールの名和高司教授の著書「パーパス経営---30年先の視点から現在を捉える」における次の記述がとてもわかりやすいです。
では、志本経営をめざすうえでの価値の源泉は何か (What)。
資本主義における基本資産は、カネ(金融資本)とモノ(物的資本)だった。ヒト(人的資産)は、資産ではなく費用(コスト)として計上される。それが資本主義に立脚した周回遅れの現代会計学の最大の盲点である。
志本経営の源泉は、カネやモノのような目に見える資産ではなく、「志」という目に見えない資産である。それは、社外の顧客やコミュニティ、社内の経営者や従業員に共有されて初めて価値を生み出す。そのためには、自らの志に磨きをかけ、広く発信して共感を生み出すような仕組みの確立が不可欠となる。
外部と容易に連結できるデジタル時代には、コモディティとしての金融資産や物的資産は、自ら保有する必要性がなくなる。一方で、顧客資産、人的資産、そして組織資産などの無形資産をいかに蓄積するかが志本経営の成否の鍵となるのである。
最後に、志本経営をいかに実現するか(How)。
志本経営を実践している企業には、共通点がある。「ワクワク」「ならでは」「できる!」とい う三つの共感要件を満たしていることだ。
志は当然ながら、経営者の強い思いの現れ。そのため、こちらの著書の後半では、企業経営の軸をMVVで表現するのではなく、PDB(Purpose 志、Dream 夢、Belief 信念)で置き換えることを提唱しています。
こちらはどれでも一番しっくりくるものを使えばいいと思うのですが、大事なことは社長メッセージにおいて、経営理念についての十分な説明を、社長自身の生の言葉とともに記すことです。
MVVだろうがPDBだろうが、わずか1行のキャッチコピーと補足説明のみで、会社の姿勢を伝えることは難しい。
志や社会への貢献の姿を、社長の生の声で十分な文章の量で、また場合によっては動画などを加えて公式サイトで伝えることは重要です。
もちろん公式サイトにUPすることは、あくまでもスタートに過ぎません。社長がオンライン・オフラインともに継続的にその言動を通して、内外に「志」を伝えることが望まれます。
社長メッセージは一度ホームページにアップしてした後に、長いこと変更していない企業も数多くあると思います。こちらは是非一度見直してみることをお勧めいたします。
企画や進め方に困っている方はこちらからお気軽にご連絡ください。
本文で紹介した本はこちら(Amazonへのリンク)>>